力（Strength）

力の正位置は、信念をしっかり持って、温かく穏やかな気持ちでいることが大切であることを示しています。これから先のことを考えて心配したり、不安を感じる必要はありません。目の前のことに対して無心になり、ひたむきに打ち込むことで自分の最大限の力を発揮できます。成功するためには、しっかりと準備をして、技術を磨いて望むことが大切です。時間を気にせず、焦らず、じっくり成功を信じて取り組みましょう。

今は自分をアピールしたり自己主張することよりも、誰かに寄り添ったり、強力し合うことで頼もしい仲間を作れるときです。自分の成功は長い目で見て、心の平穏を大事に、今ある温かい気持ちを育てましょう。あなたの意思がしっかりしていれば、遠くない未来に成功できます。

力の正位置は、勇気と決意と不屈の精神を持って事に当たれば、必ず成功の道が開かれることを告げています。自分の野心や欲望の根底にあるエネルギーはそのままに、暴走しないよう自制心を保ち、穏やかでいることが大事です。

あるいは、このカードは時として、体を動かすアクティブな事柄を指し示すことがあります。健康状態が良く、エネルギーが高まっています。スポーツをすることでエネルギーの消化不良をなくすことができてスッキリできるかもしれません。

力の正位置は、物質的な強さよりも、目に見えない力の強さを表しており、人としての器の大きさ、寛容さを表します。人間関係においても、どんなに癖がある人とでも、うまい具合にやり過ごせるでしょう。

力の逆位置は、今起こそうとしている行動が自分の意思と矛盾がないものか、リスクはどの程度のものかを今一度確かめる必要があることを示唆しています。自分に自信がないのに、そのことから目をそらして進めようとしているなら、まずは自分の弱さを認めることから始めるべきです。自分の内面的な強さが土台となって鍛錬を積むことにより、そのスキルはより強固なものへと成長します。

加えて、自分の自信を育てることを最優先にするべきだと伝えています。恐れるあまり、マイナス思考で考えすぎてしまい、そのことが行動の足かせになっているかもしれません。初めて挑戦することなら、まずはデモンストレーションをするなど、試験的な機会を設けて疑似体験することで、より考え直すべき点が浮き彫りになるでしょう。早く結果を出したい気持ちはわかりますが、心が整っていない状態で真の成功はありえません。

あるいは、目の前の困難に立ち向かうために勇気を奮い立たせなければならないことも暗示します。それは、自分には抑えられそうにない、自分の内面に潜む欲望や野心と向き合うことを示しているかもしれません。恐怖や無力さを感じているのかもしれません。

一方で、自分の魅力を過剰にアピールしたり、周囲に認められたいがあまり、でしゃばりすぎてしまうことへの警告を表すこともあります。

ウェイト版では、8番目にくるカードを11.正義から「力」に入れ替えています。もともと11.正義が8番目のカードでしたが、その正義を11番目にし、もともと11番目に位置していた「力」を8番目にしたのです。その点については、ウェイトからあまり詳しい説明はされておらず、謎に包まれています。そのことについて考察してみます。

まず、タロットカード一覧のページで分けたグループを前提として見ていきます。8番のカードは「精神レベル」の入り口です。この位置にもし11.正義のカードがあった場合、1～7番のカードにおける評価を示すとしたら、精神レベルでの経験が浅い段階で評価を下すには早すぎるのではないか？と受け取れます。もちろん、1～7番の現実的なことを経ての評価という意味では違和感はありませんが、8番は”締めくくり”ではなく”精神レベルへの入り口にあるカード”となることを考えると早すぎる気がするのです。では、8番目に「力」を配置した場合どうなるでしょう。この絵柄はライオンを手懐ける女性が描かれており、ライオンは野性的な本能、無意識エネルギーを表します。ということは、この女性は無意識エネルギーをコントロールし、また、開放されてゆとりある精神を身につけていると考えられます。精神レベルの入り口で、これほどエネルギーがみなぎり心強くて”しっくり来る”カードはないように思えます。しかしながら、8番と11番とで入れ替わっていようがいまいが、主観でいかようにも解釈できます。そのため、前後のカードとの関連性や流れを見た時にどう感じるか？を重要視した方が良いかもしれません。

7番の7.戦車と8番「力」は、同じような意味合いがありながら、対極であることも示します。全ての言葉に2極性があるとすれば同じ「勝利」でも陰と陽が混在し、7.戦車は対外的（陽）な勝利であり「力」は内面的（陰）な勝利を表すものと考えられます。そう考えたときに、8番に「力」を配置した場合、7～8のカードで関連性が強まり互いを強調することができます。

また、「精神レベル」の入り口として、「力」は「現実レベル」の入り口のカード1.魔術師との関連性もあります。それは、絵柄の中にある「∞（無限）」のマークが同じということです。また、1.魔術師で描かれている人物が男性であるのに対し、「力」は女性が描かれています。これは、”現実世界が男性、精神世界は女性”によるスタートという意味を持たせることができます。「精神レベル」と「現実レベル」のそれぞれの入り口の性別が反転した状態になり、男性と女性の融合を意味していると解釈できます。

なお、花のベルトでライオンを繋いでいる金髪の女性は3.女帝をイメージさせます。この花のベルトは、女性の体を一周し、さらにライオンの首周りを一周していますが、これは3つ目の「∞（無限）」のマークを象徴しているとウェイトは述べています。このことから、「力」のカードは1.魔術師と3.女帝の統合とも言えるでしょう。

カードに描かれているライオンは百獣の王と呼ばれており、ライオンは凶暴性の高い動物だと認知されています。その動物の口をしっかりと抑えておすわりさせている金髪の女性は、とても穏やかな眼差しでライオンを見ています。肉体的な力はライオンの方が上ですが、精神力は女性の方が圧倒的に上のようです。これは、野性的な欲望を精神力で包み込み、女性がライオンをコントロールできていることを表します。ここで言うコントロールとは、強引で力づくなものではなく、自発的な感情により成立しているものです。ライオンと女性の間には信頼関係ができているのでしょう。

また、ライオンは女性に甘えているようにも見えます。まるでしっぽを振る犬のようです。広い野原にはライオンの仲間がいる様子もなさそうで、このライオンは、一人寂しい思いをして誰かを待っていたのかもしれません。

女性が身にまとっている白い服は、純粋さと精神性の高さを表し、ライオンの色であるオレンジは情熱や生命エネルギーを表します。女性の頭上にある「無限」のマークは、女性の内面からにじみ出る自信の強さを象徴します。